3D制作の手戻りは、モデリング技術より「仕様不足」で起きる
Blenderでモデルを作り始めてから、後になってこう言われることがあります。
- ボタンだけ押せるようにしたい
- 色違いを10種類作りたい
- モバイルでも軽くしたい
- 壊れるアニメーションを付けたい
- Unity側で当たり判定を分けたい
- 遠景では軽量モデルへ切り替えたい
この時点でオブジェクト分割やUV、命名、ピボット位置まで作り直すと、制作コストは一気に増えます。
ChatGPTを3D制作に入れる価値は「AIにモデルを作らせる」ことだけではありません。むしろ実務では、Blenderを触る前に用途を言語化し、制作物の構造を決める役として使う方が効果が安定します。
役割を分けるとこうなります。
- ChatGPT:要件整理、分解、チェックリスト、命名規則、修正指示の具体化
- Blender:形状、UV、マテリアル、リグ、アニメーション、書き出し
- Unity:Prefab化、Collider、スクリプト、LOD、実機での負荷・見え方確認
例:ゲーム内の自動販売機を作る
「自動販売機を1個作る」では情報が足りません。
ゲーム内で必要な挙動まで考えると、最低でも次のような要件があります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 用途 | ステージ内のインタラクティブオブジェクト |
| 操作 | 正面ボタンを押せる |
| 可動部 | ボタン、商品排出口 |
| バリエーション | 色違い10種 |
| 表示距離 | 近景〜20m程度 |
| 対象 | PC / モバイル |
| Unity側 | Collider、Prefab、スクリプト接続 |
| 将来拡張 | 壊れる、光る、売り切れ表示 |
この情報をChatGPTへ渡し、「Blender上でどう分割すべきか」「Unityへ渡すときに何を別オブジェクトにするべきか」を整理させます。
すると、たとえば次のような構成が先に決められます。
VendingMachine_BodyVendingMachine_Button_AVendingMachine_Button_BVendingMachine_DisplayVendingMachine_Door
ここまで決めてからBlenderに入るだけで、完成後に「ボタンだけ動かしたいから分け直して」という手戻りを避けやすくなります。
「見た目」と「ゲーム上の機能」を分ける
3D制作で混乱しやすいのは、見た目の都合とゲーム実装の都合を同じモデルに押し込むことです。
たとえばColliderは、見た目と同じ細かい形状である必要はありません。遠景用LODも、近景モデルと同じ情報量は不要です。
制作前に最低でも次を分けて考えます。
見た目に必要なもの
- シルエット
- マテリアル
- UV
- 表示距離で認識できるディテール
ゲーム実装に必要なもの
- 操作対象
- Collider
- ピボット
- 可動部
- スクリプト接続点
- LOD
ChatGPTは、この2種類の要件が混ざった指示を分類するのに向いています。
修正依頼も構造化する
「もう少しゲームっぽく」「なんか重い」「もっと目立たせたい」は、そのままだと修正しにくい指示です。
これをAIに通して、観測できる変更へ落とします。
たとえば「もっと目立たせたい」なら、
- シルエットを太くする
- 彩度差を増やす
- 正面の大きな形を1つ増やす
- 細かい情報を減らす
- 10m離れたゲーム画面でも認識できるか確認する
のように変換できます。
こうすると、制作側もレビュー側も「直ったか」を判断できます。
Unityへ渡す前のチェックリスト
Blender側で完成したと思っても、Unityへ入れると問題が出ることがあります。
最低限、次を確認します。
- スケールが想定単位になっているか
- ピボット位置が正しいか
- オブジェクト名が一貫しているか
- 不要な非表示オブジェクトが含まれていないか
- マテリアル数が増えすぎていないか
- 可動部が別オブジェクトになっているか
- 法線がおかしくないか
- Unityで必要な向き・原点に合っているか
ChatGPTに「このアセットの用途は○○。Unityへ渡す前のレビュー項目を出して」と頼めば、用途に応じた確認項目を追加できます。
ただし、AIに決めさせすぎない
AIが出す「ポリゴン数は○○以下」「この設定が最適」といった数字は、そのまま正解ではありません。
PCゲーム、モバイル、VR、表示数、カメラ距離、シェーダーによって許容値は変わります。
したがって、
AIで仕様整理 → Blenderで制作 → Unityで実機確認 → 問題を言語化 → AIで修正項目へ分解
というループで使うのが安全です。
小さなチームほど、この分業が効く
大きなスタジオなら、アートディレクター、テクニカルアーティスト、ゲームプログラマが間に入ります。
一方、小規模チームや個人開発では、その翻訳作業を同じ人が全部やることになります。
そこでChatGPTを「3Dを作るAI」ではなく、アートと実装の間にいる仕様整理役として使うと、かなり実務的です。
次の一手
新しい3Dアセットを作るとき、いきなりBlenderを開かず、先に次の5項目だけ書きます。
- ゲーム内で何をする物か
- プレイヤーが触る部分はどこか
- 動く部分はどこか
- 何種類へ展開するか
- Unity側で何と接続するか
この5つをChatGPTで構造化してからBlenderへ入る。
それだけでも、「完成したのに使えないモデル」を作る確率をかなり下げられます。
Tesuji